勝つためのプレゼンの手順レポート。三ヶ月でデザインコンペが13戦と大集中。結果は13勝10敗で勝率8割弱。

重なるときは重なるものだ。

 

とある年の事。年初の一月、二月、三月の合計80日を切る日数の中に大小13コンペが重なって入ってきてしまった。付き合いのあるクライアントからの新規のデザインの依頼もあるが、大手広告代理店からの攻めの営業で競合コンペに持ち込まれた案件も多数あった。正直なところ長年の付き合いの中で、この仕事できそうですか?という感じでくるのが理想ではある。しかし、昨今はそのようなことは少なくなってきた。大手広告代理店もクライアントのマスメディの売り上げが激減し始めてきたので、我々がしている小さなデザインの領域まで手を広げてきているのだ。


 

 私は広告代理店経由という従来型のデザインプロダクションの経営手法は起業時から取り入れなかった。成り行きで仕方なくなったことでもあるが、これには深い理由があるのでいつか伝える。だから、もともとクライアント直の体制が主だった。つまり私が創った会社フォーディは当初から国内で多分初めてのクリエイティブエージェンシーだった。逆に雑誌や駅貼り広告、新聞媒体までも提案し扱っていた。クライアントの利便性を考え小さな広告代理店機能さえも合わせ持つようになっていた。そのような明確な指向を持って広告やグラフィックをデザインしてきたののは、多分私の小さなデザイン会社が日本では初めてではなかろうか。

 そうやって一つ一つのクライアントと仕事と双方の信頼を積み重ねてきた。しか

しいつも周辺にはコンペティターが存在している。今回は三ヶ月という80日間で大小合わせて13の企画とデザイン提案のコンペだ。計算上では平均5日から7日間で一つの提案をしていかなければならない。デザインだけの募集のようなコンペもあるから吸収できそうか迷う。しかし、課題が出されると全て面白そうに見えるのがデザイナーのサガ。そして競合プレは人を育てるために重要だ。また結果によって年内の仕事は決まる。断る訳もなく参加する事にした。

 

【 Step 1】まず最初に課題の読み込み作業。つまりクライアントの思いの共有が大事だ。ここを限りなくその企業の立場に立ってイメージをする。ひょっとして考えすぎなのではと自分でも思うほど状況と情勢を含めて考えや思いを巡らせる事をチャレンジする。右脳と左脳の全脳を使って見ることをお勧めする。そうすると解決方法がカラフルに見えるようになることが私はしばしばある。

 

つまり先方からのオリエンシートにこうやったら良いよという答えがあぶり出しのように浮かび上がる事がある。人はそれを直感的だというが、結構理詰めで考えていてふーっと力を抜いたときに見えることが多い。ここで注意ポイントだが、その時ロジックに全く従って無いアイデアが浮かぶことがあるが、それはそれで必ず脇にしまっておくことをお勧めする。多分、理解と賛同は先に進むにしたがて得られることが多いからだ。もちろん全然使えないこともある。

 

 

また既存のサイトのリニューアルアイデアが求められているならば、現状の分析もここで徹底的にしておき理解をしておく。


※サイトマップの分析元資料を作り込む。ここから企業の現状の問題が見えてくることもある。

 

 【 Step 2】次に企画の立案だ。これにはある程度の定番メッソドがある。まず前提条件の確認だ。これはその商品やサービスなどの今回、打ち出したいものの条件だ。それを企画書の冒頭に持ってくる。重要なファクターになるならば納期や金額も含まれることもある。

 

【 Step 3】そして、そのサービスや商品が置かれている状況のマッピングだ。これは、書き出すときりがないほど出てくる。大きな世界観がわかればいい場合やニッチな世界感を必要とする場合では大きく分量が違う。また時間の中で効率よく戦うのが重要な場合は先ほどのおおよそのイメージを抽出できるようにあらかじめ絞り込んだ要素にする方が後でロジックが組み立てやすい場合もある。

【 Step 4】次にその世界観の中で最も輝ける分野を脳内空間で最初は平面上に考え、サービスや商品のユニークセーリングポイント USPを縦軸に頭の中で見立てて見ると、いけてるエリアがあることを発見する。もしかしたらそのエリアからクライアント自身が気がついていなかったUSPになり得るものも見つかることもある。その場合はオリエンテーション破りになるが、別案として取っておくことをお勧めする。アイデアを出すコツとしては予算をある程度無視しても「なんでもできる」とスタッフに伝えること。

【 Step 5】その次、その見つかったポイントに対して目標の言葉をつける。このことを一般的にはコンセプト開発ともいう。このコンセプトはプレゼンの要にもなり、とても重要で、企画書の大きな柱だ。しかし誰もがすぐにわかる言葉で表現されていなくてはならない。例えばコピー複合機の新規参入が目的の広告の場合「◯◯よりオフィスの最適化への提案」という具合だ。これは複合機の性能を言うのではなく新商品がもたらす価値を見つけたものだ。そのようなコンセプトワードをいくつも練りだす。ここが企画書の作成中で一番面白いところだ。すると徐々にビジュアルも見え出してくる場合もある。

※これは大手広告代理店と競合プレで勝って、採用された企画コンセプトの案を実際のグラフィックに落とし込んだもの。

 

 【 Step 6】そのいくつも出てきたコンセプトワードは、必ず数時間は寝かして頭をそこから切り離し、休んだり他のことをしてみることが重要。これは凝縮と弛緩の法則と私が呼んでいるものだ。パンパンに集中して頭の中をそれだけの世界にする。その後一気に忘れるように努力をする。外に食事をしに行っても構わない。また翌日に持ち越される作業になる場合は帰り際にサウナに私は行く。一旦忘れることができたと思ったらもういっぺんその考えを見てみる。修正したほうがいい場合もあるしいけていると思えるものもある。

 

【 Step7】その後コンセプトを三つ程度まで絞り込む。そのためには他の関係者にも意見を聞く。しかし最終的に決めるのはあなたである。ここで大きく勝敗は決まる可能性が大きい。

 

【 Step 8】そしてそのコンセプトをデザイナーやコピーライターにディテールまで共有してもらう。その時にまた提案が出てくる場合もある。よければ取り入れる。どこまで行ってもPDCAサイクルで構わないのだ。ここで他の人間、特に営業やプロヂューサーから対立した営業的意見が出てくる場合が多い。なんのことはないつまらない意見も多いが、重要なアドバイスになる場合もある。しかしここで忘れてならないことは、社内やスタッフの感情を大事にすることをメインにすると社内マネージメントのためのアイデアを先方にプレゼンしてしまうことになりかねないので、ある種冷酷さが大切だと思う。

 

【 Step 9】デザインやコピーの方向への打ち合わせをし、コンセプトに沿って自由に意見やビジュアルアイデアを持ち寄ってもらう。デザイナーには必ずラフとともに参考になるイメージ資料を持ってきてもらう。あくまでもここでマックでデザインをさせないことが重要で、ビジュアル言語を共有するまでに止める。デザイナーもコピーを提案したいように、またコピーライターもビジュアルの提案ができるように雰囲気のルールを作る。

大きな壁にそれらをセロハンテープでコピーとビジュアル系にわけ順に貼り付ける。

 

【 Step 10】まずはそれぞれを各自に社内プレゼンをしてもらう。うまく説明ができる場合は大方、いけている。ただしクリエイターは言葉がうまくない場合もあるので中身をニュートラルに感じ取ることが重要。逆にプロデューサー系の人間は言葉が巧みでコンセプトからかけ離れている場合でさえも催眠術のように周りを引き込むことがありここでのトップとしての判断は重要。

 

【 Step 11】次に仮ラフ・ビジュアルとコピーを組み合わせて貼り付けてみる。すんなりと見えてくるものがあるからそれらを整理し絞り見ながら、ピンとこないものはどんどん壁からはがす。結果が良好でない場合は解散して、もう一度やり直す。

そしていよいよプレゼン用ビジュアル制作に入る。そこにコピーを当てはめてみる。色使いやタイポの調節をしていき完成したら、その他展開案を作る。

 

【 Step 12】それらを企画書に張り込む。

 

【 Step 13】次にスタフイングとスケジュールと金額のページを作る。

おおよそこのような手順となり企画書は完成する。ここまでかなりの時間と神経を使う。

 

まだ勝つためのプレゼンには続きがある。ここはとても重要なところで、あまり他の制作会社では取り入ているのを見たことがない。

【 Step 14】前日前までに、必ず本番さながらのプレゼンのリハーサルをすること まずプレゼンリーダを決める。これは今後その人を育て上げたいという気持ちでも良いし、自分で買って出たスタッフでも良いが、それをあなたが決める。一人にこだわらなくても、入り口の挨拶は営業の人間、企画骨子はライター、デザインの説明はデザイナというように分けて良い。

 

【 Step 15】何がなんでも勝ちたかったら社内の人間をできるだけ集めてリハーサルをすることだ。持ち時間を全体で30分にする。これは聞いている相手が疲れるからこのぐらいの時間に絞り込むことでプレゼンのクオリティーが磨かれるからだ。そして皆んなは座って、プレゼンする人は壁を背にしてに立って本番のようにリハーサルを開始する。ここで、本人が上がってしまうこともあるが、全員で応援して聞く姿勢がとても重要だ。

 

【 Step 16】その後皆んなでプレゼンのフィードバックを徹底的にする。口癖で「エ〜」とか聞きづらいものも可哀想だが伝える。また説明の順番がおかしかったり、つじつまが合わないところもフィードバック。声の強弱もこうしたほうがいいよと伝えるべきは伝える。仕草もダメな場合は指摘する。本人も納得したら帰宅してからも練習してたスタッフがいた。翌日、その人は変貌を成し遂げた。私は心の中で泣いていた。よくやったと。

 

デザインや企画書におかしなところが見つかったら、修正を加える。一旦できたものをもう一度戻って手を加えるのはとても疲れるし、皆んなはやらない理由を捻くり出す。しかし最終判断はあなたがする。負けた時の疲労感よりも勝った時の素晴らしい誇りをみんなに伝える。以外とデジタルデータなので早く手直しできるのがマックデザインになった良いところで、ここでもPDCA (Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の 4 段階) で頑張る。

 

【 Step 17】最後は待ちに待った本番。ここでは前日まで皆んなでやれるところまでやったと全員に伝えてプレゼンの会議室まで向かう。場合によっては他の制作会社や広告代理店の方々と鉢合わせになる場合もある。落ち着きとテンションを保ちいざ呼ばれたらプレゼンだ。もうこうなったら状況下ではいろいろ変わることもある。プロジェクターが壊れていたなどさまざまだ。また今までのPDCAで作りあげた企画書もトークも、ここでは70%程度でしか伝えきれないことが多い。

 

そこで現場で重要なのはOODAという考え方。Observe(観察) Orient(状況判断) Decide(決断) Act(実行)だ。そう現場では直感に従って臨機応変にするべきだ。皆んなはPDCAによって作りあげた今回の内容を熟知しているのだから、そこからは外れバラバラになりようが無いと信じる。そして的を得ている質疑応答など構わないから楽しんでするようにとスタッフを信じきる。

 

【 Step 18】帰り際に、そして会社に戻ってからでも、良い結果が来るように皆んなで祈る。

 

【 Step 19】素晴らしい結果が電話かメールで来る!

 

以上、皆様の幸運を祈ります。